ディスカバリー(日本とアメリカの違い)

 日本とアメリカの民事訴訟手続で最も異なると言われているのが,Discovery(証拠開示手続)の制度です。

 この制度は,法廷でのtrial(審理手続)の準備のために,当事者双方が互いに質問したり第三者に質問したりして証拠を保全する手続です。

 未知の証拠の提出による不意打ちを防止し,事前の十分な事実の把握と準備の機会を互いに与えて,trialにおけるフェアな対決を可能にすることを目的とします。

 Discoveryには,主に次のような種類のものがあります。

 Request for production of documents(文書等の提出要求)
 一方当事者が相手方に対してその管理下にある文書等の提出を求め,またその閲覧複写等を認めるよう要求する手続です。相手方の管理下にある不動産への立ち入りを求めることもできます。要求を受けた当事者は,30日以内に書面で要求を認めるか異議を述べるかを回答しなければなりません。

 Interrogatory(質問書)
 一方当事者が相手方に対して質問書を送付し,相手方は30日以内に調査して回答するという手続です。

 Deposition(証言録取)
 弁護士による法廷外での証人尋問です。証人が宣誓のうえ弁護士が質問をし,court reporter(法廷記録者)が証言を正式な記録に残します。質問をするのは証人に敵対する側の弁護士であることが一般的であり,その弁護士の事務所で行われる場合が多いです。

 Discovery違反の場合には次のような制裁があります。

 費用支払命令
 相手方が開示に応じない場合に,開示の命令を求める申立を裁判所にすることができますが,この申立が認められると,開示しなかった相手方は命令に要した費用を支払わなければなりません。

 直接制裁
 開示の命令に服さず,または開示要求を無視する当事者に対して,裁判所が特定の事実があったものとみなされます。悪質な場合には請求を棄却し,または欠席判決を下されることもあります。

 裁判所侮辱罪
 裁判所の命令に従わない場合には,裁判所侮辱罪に問われ,投獄され,または罰金が課せられます。